予防と健康管理レポート

    はじめに

予防と健康管理のレポートを書くにあたって、与えられたテーマを軸に二つの論文を参考にした。

 

選んだキーワード

メンタルヘルスと自律神経系

 

論文の概略

「PSTDの神経化学」著者:加藤忠史

 

PSTDとは生命にかかわるような出来事を体験した後、ふとしたきっかけでその光景がありありとフラッシュバックしてしまったり、その出来事に関する悪夢にうなされたり、不安、緊張の強い状態が続くなどの症状を呈するものである。またPSTDが病気として認められたのは1980年だが、それ以前の文学や映画でも描かれていたことから、認知自体はされていた精神疾患である。

 PSTDの神経科学的研究は、疾患としての原因、診断、治療をさぐるという視点や、ストレス反応の神経回路、ストレスが脳に与える影響といった視点に加えて、情動が記憶に与える影響、記憶想起の随意性と非随意性など、より普遍的な神経科学的研究につながりうるものだろう。

 

ストレスによる身体の反応は、交感神経の緊張と視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系の変化の2つが主なものである。

 交感神経性のものは、ストレスが大脳辺縁系を介して視床下部に伝えられると、交感神経が興奮し、心拍の増大、呼吸回数の増加、瞳孔の拡大などの身体反応を招く。

 HPA系のものは、ストレスが大脳辺縁系を介して視床下部からのCRH(ACTH刺激ホルモン)放出を促し、これが下垂体にはたらき、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させ、副腎皮質からのコルチゾール分泌を促す。

 PSTDでは、交感神経系が亢進され、HPA系は逆に過剰に抑制されている、とのことらしい。確実な結果はでていない。コルチゾールの分泌が抑制されると、ストレスにたいしての抵抗力が落ちるためとも考えられる。

 

 ストレスによって死亡したミドリザルの海馬CA3では樹状突起の減少が生じたことで、ストレスには海馬の形態学的な異常を引き起こすとも考えられている。しかし、PSTD患者がすべて同じストレスによってPSTDになるわけではない。このことからPSTDを生じやすい素因も問題となる。

 

 PSTDの客観的診断はまだ確立されているわけではなく、これからの研究の発展が望まれる。

 

「ストレス相談の有効性について」著者:古木勝也 山根英之

 

各種の調査から、自分の仕事に関してのストレスを感じている労働者や、職業性ストレスによる健康障害をきたした労働者、経済的理由による自殺例の増加が報告される。このような状況で企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が増している。

 

以前から健康診断後のフォローとして保健指導を行っていた対象の事業場(約600名)でメンタルヘルス対策の一環として月1回のストレス相談を同様のサービスとして展開していた。今回の対象者は職業性ストレス簡易調査票のストレス反応として不定愁訴率の高かった47人についてストレス相談を実施し、ストレス相談の有効性を確かめた。面接は1人30分、1日10名、月1回のペースで行った。

ストレス相談での面接では体調面での変化、心理的な面での不調はないかなどを質問した。そして本人から心理的な面での話が出る場合は、傾聴することに努めて、今後の対処などを本人と一緒に考えていくことと、特に心理的なめんでの不調がない場合は体調面、日常生活での健康意識を聞くことに努めて、健康的な生活習慣にむけての課題を話し合うことに気をつけた。

 

ストレス相談によって心理的な仕事の量的負担、質的負担、職場環境によるストレス、仕事のコントロール感、相談受診者の仕事技能の活用度、仕事の適正度、働き甲斐感といったストレスが原因となる因子について有意に改善が認められた。またストレスによっておこる心身反応についても活気、イライラ感、疲労感、抑うつ感、身体の不定愁訴すべてにおいても有意に改善が認められた。そして家族、友人からのサポート、仕事や生活の満足感は改善傾向をしめした。

 

ストレス相談はメンタルヘルスの向上に有効であり、職場全体としてのストレス対策の導入を積極的に考えるべきであり、またストレス相談以外にも、メンタルヘルス教育も併せて今後の労働衛生期間のメンタルヘルスサービスをして職場に提供していきたい。

 

選んだ内容とビデオの内容から自分自身で考えたことを将来医師になる目で捉えた考察

 

石綿、アスベストは人に害を及ぼすと研究の結果わかっていたのに、残念ながらその研究の結果があまり認知されていなかったせいで相当多くの被害者が出たこと、また自分もそれに被害を受けている可能性があることには怒りも覚える。これは国が法で規制さえすれば確実に防げたはずだろう。しかしこのことから、患者さんに使う薬に対する確かな知識、新たな情報に常に貪欲でなければならないと感じると同時に、知識がないまま効くらしいということから何も考えずに薬を処方してしまったときのことを考えると恐ろしくもある。ロボトミー手術のように一時期ノーベル賞候補とされていた治療法が非人道であると問題になった例もある。常に情報が正しいとは限らないが、信頼できる情報を獲得する技術を習得し、また患者さんの状態という生の情報を見極めなければならないと思った。

 

また、PSTDについてだが、医師はPSTDが非常に発生しやすい環境にいると思った。常にストレスに晒され、人の生死の境界をほかのどの職業よりも見ることになるからだ。強烈なショックから自分をどう守るか、それともショックをどう受けないようにするか、幸いにも先輩の医師の方は本当にたくさんいらっしゃるので、これからさまざまな話を聞いたり、読んだりすることで、その技術を学んでいきたいと思う。だが、論文から学んだことだが、同じストレスであってもそれぞれが同様にPSTDになるわけではないため、自分なりの覚悟を持って働けるようになりたいと思った。

 

またストレス相談についてだが、うちの父を見てても思うが、医師はあまりストレス相談を受けてたがらない。ストレスがたまらないわけがない職業であり、業務が苛烈な科ではそのストレスは想像を絶する。だが、医師に対してのストレスカウンセリングは行われているという話は聞かない。、ストレスのある職業であるのにストレスを減少するために有効であるストレス相談が行われていないことに、医師自身に医師以外には医師のストレスがわからない、ということを考えているのだと思う。医師自身が自分自身をカウンセリングするにしても限界があると考えられ、家族、友人たちにサポートしてもらうことになるのは間違いない。自分がストレスに負けない、環境作りを心がけることも医師としての仕事なのではないかと思った。

 

    終わりに

 

主にメンタルヘルスについて述べさせてもらったが、なかなか身近に感じられる内容でやってみたら意外と面白かった。悩みがなさそうとよくいわれるけれど、ストレスについて考えさせられるような文献にたまたまめぐり合ったのは幸運といえるかもしれない。